世界中の企業に変革を起こしているロボティック プロセス オートメーション(RPA)。その動向を追っている方なら、従来のRPAツールを拡張し、RPAだけでは成し遂げられなかったことを可能にする人工知能(AI)についても耳にしたことがあるでしょう。
近年、オートメーション・エニウェアを含むRPAソフトウェア ベンダーの間では、インテリジェント ソフトウェア ロボット(Bot)をAIベースのソリューションではなく、「コグニティブ コンピューティング理論を中心に構築された製品」と、より正確な用語を使うようになっています。
しかし、このような呼び方で分かりやすくなるのでしょうか。そもそも、コグニティブ オートメーションとは一体何なのでしょうか。当ブログでは、そうした複数の疑問を解き明かしていきたいと思います。
まず、Deloitte社では、コグニティブ オートメーションを、「人の行動を模倣するAI技術の一部」と定義しています。
「音声認識や自然言語処理などのコグニティブ技術およびRPAは、かつて人間が行っていた知覚や判断力に基づく作業を自動化する」
さらに、IBMはその定義に、「コグニティブ コンピューティングはその用途においてAIと異なる」という定義を追加しています。
「AIシステムでは、システムが分析に基づいて取るべき行動を医師に伝えるが、コグニティブ コンピューティングでは、システムが医師の判断を支援する情報を提供する」
これら2つの定義を組み合わせると、コグニティブ オートメーションは、人間の脳の仕組みを模倣する特定のAI手法を用いて、人間の意思決定や作業の遂行、目標達成を支援するAIの一部分であることがわかります。
より具体的に言うと、コグニティブ オートメーションとは、特定のビジネス プロセスの自動化に適用されるAI手法ということになります。
コグニティブ オートメーション ソリューションは、機械学習や深層学習といったその他のAIとは異なり、人間の思考を再現します。つまり、自然言語処理や画像処理、パターン認識、加えて文脈分析の技術を駆使することで、より直感の飛躍や知覚、判断を実現するのです。
コグニティブ オートメーションは、加速の一途をたどっています。IDC社の調査によると、2017年のAIの最大支出分野はコグニティブ アプリケーションで、これには、自動的に学習、発見、推奨、予測するプロセスを自動化するアプリケーションが含まれます。全体としては、コグニティブ ソフトウェア プラットフォームへの2018年の投資額は25億ドル近くにのぼると見込まれているほか、コグニティブ関連のITおよびビジネスサービスへの支出額は35億ドル超、また、5年間の年間平均成長率(CAGR)は70%近くになると予測されています。
また、IDC社の調査によると、2019年を最も牽引するコグニティブ アプリケーションは、品質管理の調査システム、診断・治療システム、自動顧客サービス エージェント、自動脅威インテリジェンス・防御システム、不正行為の分析・調査であると見込まれており、これら5つの分野がコグニティブ関連支出の半分近くを占めると予想されています。
別の角度からコグニティブ オートメーションについて考えてみましょう。コグニティブ オートメーションは関連付けによって一部だけでも学習し、取得した非構造データによって関係性を構築してインデックスやタグ、注釈、その他のメタ データを作成します。そして、請求書やPO番号、発送先、資産、負債など特定のビジネス プロセスに関する項目の類似点を特定しようとします。コグニティブ オートメーションは、下記のような質問をベースに関係性を構築します。
- 前に見たことがあるか。
- 同様の事象では何が行われたか。
- 前に見たものと関連しているか。
- この関連性の強みとは。
- 誰/何が関与しているか。
コグニティブ オートメーションには、他のAIに優るメリットが数多くあります。そのひとつに、特定のビジネス プロセスを自動化するよう事前にトレーニングされているため、より少ないデータで稼働でき、データ サイエンティストやIT部門のサポート無しで複雑なモデルを構築できるという点が挙げられます。また、ビジネス ユーザー向けに設計されているので、わずか数週間で運用できるようになります。
なかでも、最も魅力的なのは、コグニティブ システムはデータが追加されればされるほど、より多くの関連付けを実行できるという点です。これにより、コグニティブ オートメーション システムは人が見ていなくても学習を継続し、入力される新しい情報に絶えず適応し続けることができるのです。