業務の自動化は多くの業界、特に医療、金融、運輸などの規制の厳しい業界で革命をもたらしてきました。ロボティック プロセス オートメーション (RPA) を導入することで、機密性の高い書類への記入や仮想 ERP システムからのデータの抽出などを自動化できます。RPA ツールは年中無休で 24 時間、 100% の精度で稼働し、Bot は不調を訴えることもありません。繰り返しの作業を自動化することで、人々が価値の高い業務に時間を費やせるようになり、その結果仕事に対する満足度も高まります。
その一方で、規制によるデータ保護の要件が一段と厳しくなっています。何千人もの患者の記録が保存された医療会社のノートパソコンがレストランに置き忘れられていたなどの話をお聞きになったことがあるかもしれません。これは患者のプライバシー、そして言うまでもなく会社の評判が損なわれる、取り返しのつかない事態です。ノートパソコンもさることながら、重要なデータが失われるということは、誰もが避けたい状況です。
一般的な解決策には、仮想デスクトップインフラストラクチャ (VDI) ベースのソリューションを使用して、データを扱うアプリケーションを企業インフラのセキュリティ下でホスティングするというものがあります。VDI は数々のメリットが実証されており、柔軟性、管理容易性、スケーラビリティ、コスト削減、セキュリティ、その他のメリットがあります。VDI と RPA は、最高の組み合わせのように思われます。これらは共に機能し、非常にセキュアで生産性の高い職場環境を提供してくれます。
しかし課題もあります。Citrix を使用した従来の VDI セットアップを例に見てみると、 Automation Anywhere クライアントが Citrix サーバーのアプリケーションとうまく同調しない部分があります。このような環境ではイメージベースの自動化のみが可能で、画面解像度が変更されたりアプリケーションの UI がアップデートされたりした際に、自動化の質とパフォーマンスの両方に影響が及びます。非 VDI 環境では、 Automation Anywhere が様々な技術を駆使してアプリケーションとやり取りし、コントロールやデータに容易にアクセスできます。 Citrix 環境では Automation Anywhere クライアントが Citrix サーバーで利用できなくても、 Citrix の開発した独立コンピューティングアーキテクチャ (ICA) プロトコルを使用して、これらの様々なコントロールを利用できます。
Citrix ICA
Citrix ICA プログラムは Citrix サーバーにインストールされ、クライアントとサーバーの間でデータの受け渡しを行うことで、自動化機能を強化します。 ICA は Citrix から送信される Windows プレゼンテーションサービスプロトコルで、次の 2 つの重要な役割を果たします。
- サーバー側では、 ICA はアプリケーション論理をサーバーでユーザーインターフェースから分離させ、標準ネットワークプロトコルでクライアントに送信するという特有の機能を果たします。
- クライアント側では、ユーザーがアプリケーションインターフェ ースを見て操作することができますが、アプリケーション論理は 100% サーバーで実行されます。
Automation Anywhere と Citrix ICA を組み合わせたソリューション:Automation Anywhere Remote Agent
弊社は ICA の非常に高い価値を認識し、 ICA プロトコルをサポートし、イメージからではなくアプリケーションに直接アクセスできるよう、 Remote Agent を開発しました。これにより、アプリケーションの優れたインターフェ ースを使用できるようになり、より効率的で信頼性の高い自動化が可能になります。Remote Agent は Citrix Storefront でアプリとして機能し、 ICA プロトコルで Automation Anywhere Enterprise アプリケーションと緊密に統合されます。Remote Agent は Automation Anywhere Enterprise バージョン 11.3.2 で利用でき、 Citrix XenApp バージョン 7.5 でテスト済みです。
Automation Anywhere と Citrix ICA を組み合わせた例
Automation Anywhere Remote Agent の仕組みを紹介するため、 Remote Agent が組み込まれた Automation Anywhere クライアントを使用して、血液バンクのWebフォームへの患者データの入力を自動化してみましょう。この場合、 Citrix Storefront で利用可能なブラウザをリモートアプリケーションとして使用し、 Automation Anywhere クライアントがフォームのコントロールをどれだけ容易に操作できるかを見てみます。
この例では、 Automation Anywhere クライアントはユーザーのローカルマシンにインストールされていて、 Remote Agentは Citrix サーバーにインストールされています。さらに、このユーザーは Citrix Storefront でブラウザ (Internet Explorer) も利用できます。ユーザーが Citrix Storefront から Remote Agent とブラウザを立ち上げ、必要なウェブフォームに移動してクライアントを起動し、現在ボットにオブジェクトのクローニングコマンドを追加しようとしているところです。ここからの操作について解説します。
手順 1:ユーザーがウィンドウの選択リストからリモートアプリケーションを選択します。各リモートアプリケーションはアプリケーション名の終わりに「\\Remote」が付いていて、ローカルアプリケーションと区別されています。
手順 2:ユーザーがクライアントの [Capture] ボタンをクリックしてプロセスの記録を開始し、ウェブフォームに移動します。ユーザーがWebフォーム上でマウスを動かすと、各コントロールが赤いボックスで囲まれハイライトされます。この例では、ユーザーが名前を入力するよう選択したため、そのテキストボックスが赤い境界線でハイライトされています。
手順 3:必要なフィールドが選択されると、選択された様々な属性と実行できる関連アクションがクライアントに表示されます。これは、このセットアップで Remote Agent の実行可能なオブジェクトのクローニングです。ユーザーは自動化で使用するコントロールやアクションを素早く簡単に特定できます。
手順 4:選択されたアクションの一部として、選択されたフィールドにテキストを追加します。ここでは、適切なフィールドが選択され必要に応じて更新されることを確認するため、仮のテキストを入力します。
手順 5:自動化を保存したらボットをテストします。 Bot に入力されたテキストが選択されたフィールドに入力されるはずです。このオブジェクトのクローニングは、記録中に使用された適切なコントロールを正確に認識し、実際に実行した際に正常に機能しました。異なる構成で機能することが重要なのは、このためです。
まとめ
多くの組織、特に規制の厳しい業界の組織にとって、 Citrix はデータのプライバシーを保障するセキュアな環境を提供してくれます。弊社のRPA テクノロジーでデータを自動化することで、データを扱う際に 100% の精度を実現できます。セキュリティとシステムの分離によるメリットを維持しつつ Citrix の多様な構成への対応という課題を解決することは、あらゆる RPA プロジェクトの成功に欠かせません。弊社の Remote Agent は、組織が必要とする Citrix VDIの柔軟性とセキュリティを維持しつつ、オブジェクトのクローニングで Automation Anywhere の威力を最大限に発揮させます。